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【第20回】 特許業界への「憧れ」と転職 〜「天職」との出逢いを求めて〜 [2009/11/20]
最近,「特許業界に深い憧憬の念を持った」「弁理士に憧れている」といった転職希望者やキャリア相談者が顕著に増えてきました。特許業界で働く者としては,特許実務の経験がない方でもそのような気持ちを持ってくれる方が増えること自体,大変光栄に思います。また,これからも意欲と英知にあふれた方々に,この業界の門を叩いてほしいと心から願っています。しかしながら,実際に,こうした皆さんからの転職相談の内容や希望を拝見すると,一抹の不安を感じないわけにはいきません。相談される方々は,「早期退職に応じた」「派遣期間満了で契約が打ち切りとなった」といった厳しい経験を持った方も多く,大変お気の毒な状況と心を痛めることも少なくありません。しかし,だからといって特許業界に「青い鳥」を簡単に求めるわけにもいかないのが実情です。 特許業界自体も,景気悪化の影響を受け,メーカーからの受任件数が減少するという厳しい状況にあります。また特許業界は,非常に高い技術分野の専門性が求められる世界です。実務未経験者の場合,それまで徹底的に技術分野の仕事を掘り下げた経験がないと,特許業界はなかなか門戸を開けてはくれません。仮に弁理士試験に合格しても,技術分野での職務経験がないと必ずしもキャリア人生における「一発逆転」につながらないケースが増えていくでしょう。 今回は,こうした特許業界を目指す方々に特許業界への転職を,改めて客観的かつ多面的に考えていただきたいという思いから,このコラムを書かせていただきました。 キャリアの世界では,よく「天職」という言葉が使われます。「天職」とは天から授かったような,本当に自分自身が人生をかけて取り組みたい仕事を言います。そのような仕事に就けた方は本当に幸福な方です。転職相談をされる皆さんは,きっとこの「天職」を求めている方々ですね。それでは「天職」はどのような条件が整って初めて実現できるのか,理解しやすいように図にしてみました。
図を見ていただくと,「天職」がどこに存在するか一目瞭然でおわかりいただけると思い ます。「天職」は (1)したいこと(好きなこと,興味のあること) (2)できること(得意なこと) (3)求人市場のニーズ(求人先があるか) の3つの条件がピタリと揃った場合に,初めて実現します。仮に2つの条件が揃ったとしても,「天職」には巡り合うことはできないのです。単なる「憧れ」だけではとても実現できないものであることが,ご理解いただけると思います。次に転職に辿り着くまでのステップを,順を追って説明していきましょう。 まず自分自身の「したいこと」が特許業界にあると考えた方は,次にステップとして,訓練により能力・スキルを高めて「できること」にしていきましょう。具体的な手段としては,知的財産管理技能検定に向けた学習や弁理士資格取得に向けた学習が考えられます。 ただし,弁理士を目指す方については,ひとつ注意点があります。弁理士業務の基本は特許明細書の作成です。特許明細書の作成能力は,弁理士試験に合格した時点に必然的に身についているという性質のものではありません。「弁理士試験に合格したが,特許明細書の作成に馴染めない」ということだけは,何としても避けたいものです。 そこで当社では,弁理士の学習を開始していない段階で特許明細書の作成を体験できる,「特許明細書作成体験講座」を定期的に行うことにしました。この講座は技術分野の知識は必要としませんので,文系の方にもご参加いただけます。特許明細書の作成は,弁理士の基本となる仕事です。将来自分が得意とする仕事になりそうかどうか,早い段階で確認しておくことは重要だと思います。 3番目に,「したくて,できること」を行う職場(求人先)があるのかどうか,なるべく早い段階から調べておく必要があります。 多くの方々は,求人先として特許事務所や大手メーカーの知財部をイメージされています。しかしながら,これら求人の件数はリーマンショック以来減少しており,転職希望者の増加により競争は激しさを増しています。 その一方で,積極的に知財部員を求めている業界もあります。代表例が遊技機(パチンコ・パチスロ)業界です。意外な感想をお持ちの方も少なくないかもしれません。皆さんも,お茶の間で毎日のように,アニメ・ドラマなどを題材にした新機種をテレビCMで目にすることも多いでしょう。その舞台裏では,メーカー各社による新機種の開発と知財を巡る競争が,日々激しさを増しているのです。新機種を世に送り出す前に,重要な特許要素を見出して権利取得を進める各社の特許技術者は,こうした競争を勝ち抜くために極めて重要な存在となっています。「好きこそものの上手なれ」の言葉通り,遊技機が好きな方にとっては「したいこと,できること」がある「天職」の職場となるかもしれません。 また,ベンチャー・中小企業の特許出願ニーズも高く,当社にも多くの依頼があります。ベンチャー・中小企業では,知財担当者が他の業務との兼務であったり,専門的な知識を持っていないケースも少なくありません。こうした企業の担当者に話しを聞くと,「現状,自社内で知財の専門家を育成することは難しいので,知財の専門知識と経験を持った人材であれば是非採用したい」という声は多く,採用への意欲を感じます。 未知のものに対する興味や憧れが,人類を進化させた原動力であったことは疑う余地もありません。特許業界に「憧れ」を持っていただけることは,すばらしいことですし同時にうれしいことでもあります。特許業界に「憧れ」を持ったという方は,次のステップとして,上記のように複数の観点から特許業界への転職を客観的に判断していただきたいと思います。そのことが特許業界への転職成功につながっていきます。 (佐原雅史=株式会社ブライナ 代表取締役,弁理士)
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