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知財パーソンの履歴書


八木崇さんの場合 (ブリヂストン知的財産本部勤務)
[2009/07/06]



 八木崇さんは,大手タイヤ・メーカー,ブリヂストンの知財部門に勤務している。入社以来,約30年間,知財業務一筋で歩んできた。現在は,ブリヂストン・グループの知財管理業務を任され,知財管理システムのメンテナンスや改善,グローバル・データベースの構築など担当している。
長年,知財部門の第一線で活躍する知財パーソンの人物像に迫る。




メーカーで知財一筋30年の1級知的財産管理技能士

 八木さんは,大学で機械物理工学を学び,大学院ではシステム科学を専攻した。1978年,修士課程修了と同時にブリヂストンに入社,当時の特許部に配属された。
 最初に担当した業務はタイヤの製造装置や製法の発明に関する業務である。ここでは,出願権利化や抵触検討といった仕事をこなしてきた。その後,タイヤ以外の製品に関する発明も取り扱うようになった。
 1988年,ブリヂストンは,当時米国2位の市場シェアであった米Firestone社を買収した。これに先立つ6〜7年ほど前にFirestoneのタイヤ工場を買収する話しが持ち上がった。当時ブリヂストンは,海外に工場はあったものの,さらなるグローバル化に課題があった。この工場買収は,グローバル化の足がかりとするには絶好の機会であった。八木さんは,Firestoneの工場買い取りに関する知財面からのフィジビリティ・スタディを担当,買収に際してFirestoneの工場を現地調査した。工場を買収したとしても,工場が他社の特許を侵害していれば,結果として工場を稼動できないからだ。当時,Firestoneはブリヂストンのライバル。Firestoneとの直接交渉はある種緊張した雰囲気であったという。八木さんは「Firestoneとは買収を巡り,Firestone知財部長と各種交渉などのやり取りがありましたが,Firestoneを買収した後は良い仲間になりました。まさに『昨日の敵は今日の友』という感じ」と思い出を語る。
 1990年代に入るとブリヂストンは海外事業を加速し始めた。八木さんも2年間ほど,米国の特許事務所で米国知財法と実務を学んだ。
 2007年からは知的財産本部の「管理ユニット」の業務を任され現在に至っている。ここでは知財管理システムのメンテナンスや改善,事業のグローバル化に伴うグローバル・データベースの構築を進めている。「わが社は事業をグローバル化させており,知財も世界各地で生まれる状況になっています。これら知財を知的財産本部で一元管理することによって知財リスクを回避しつつ,事業戦略とリンクさせた知財活動を行います」(八木さん)。

 入社以来30年に渡り知財業務に従事している八木さんは,知的財産管理技能検定の前身である知的財産検定が「リスクマネジメント,情報調査,権利化(国内外),各種契約,権利行使,価値評価,資金調達に関する深い専門的知識と業務上の問題解決能力など,企業の知財部員に必要な能力を量る検定であり,企業における知財実務の能力測定に相応しい」と感じ,受検したという。八木さんは,特例講習を経て2008年に1級知的財産管理技能士となった。
 弁理士の取得を考えたこともあったが,業務が多忙で勉強に時間を回せずにいた。一方で「弁理士資格は特許事務所員には必要だと思いますが,企業の知財部員が必要な能力とは必ずしも合致していないのでは」と常々考えていたという。

知財のベテランがアドバイスする知財検定の勉強法

 八木さんは検定に向けた勉強を始める前に,技能士とはどのような資格でどのような能力が求められているのかを理解することからスタートした。知的財産管理技能検定の趣旨を「知財業務で求められている能力を認定して資格を与える」と理解した八木さんは,「“日々の業務”と“受検勉強”を組み合わせることが合格の近道」で語る。
 問題を的確に分析・把握して,適用すべき規範(法律など)を選択し,問題に当てはめて解決する,というステップで学習するのが八木流。 具体的にはどう勉強すればよいのだろうか。

 実務で重要になるのは問題の発見・把握。検定の場合,試験問題をしっかりと読んで,問題の所在を把握するように日ごろから意識して訓練したという。しかし,試験には制限時間があり問題数も多いので,「効率的な解答が合否の鍵を握ります。例えば,1級の試験では契約書に関する問題が出ることがあります。私の場合,問題(契約書のドラフト)の内容把握よりも先に設問を確認することで解答の効率を高めました」(八木さん)。 次に実務上の問題(≒試験問題)を解決するために,必要な法規範などの専門知識を身に付ける。ここでは,参考書などで該当する箇所をよく理解するようにしたい。過去問を中心になるべく多くの問題を解く。「弁理士の短答式試験問題も役に立つと思います。ただ,短答式の場合,実務ではあまり出てこない枝葉を問う問題も多いので,検定対策で短答式の問題を解く場合,マニアックな問題は深く追求しなくてもいいでしょう」(八木さん)。 最後のステップでは「知的財産管理技能検定1級学習の手引き」の模擬問題を使った。これで解法を身に付ける。「特に間違えた問題は,掘り下げて正しい考えを理解することで問題適応能力が身に付きます」(八木さん)。
 八木さんは,参考書などを使って日々の業務でカバーしきれない箇所や実務で疑問に思った点を補ったという。八木さんが検定受検にあたり,参考にした書籍は,弁理士試験の必携としてお馴染みの通称“青本”こと「工業所有権法逐条解説」(発明協会),「弁理士短答式過去問セレクト」(法学書院),「特許法概説」(吉藤幸朔著:有斐閣),「米国特許法逐条解説」(ヘンリー幸田著:発明協会)「特許判例ガイド」(増井和夫,田村善之共著:有斐閣)など,定番と言われるものが多いのが特徴だ。
 八木さんは,これから検定を受ける人たちに対して「技能士のスタンスを理解し,日常業務から生まれる問題を発見し,解決する能力を身に付けていけば合格するレベルに近づけるでしょう」とアドバイスをくれた。

技能士が浸透すれば人事評価の指標になる

 1級知的財産管理技能士を取得したあとも,八木さんは積極的に能力向上に励んでいる。知的財産管理技能検定の運営を厚生労働省から受託した知的財産教育協会では,技能士向けの「フォローアップ研修」を2008年から実施しており,八木さんも本研修を受講した。
 現在,ブリヂストンでは人事評価に知的財産管理技能士の取得は含んでいないが,「今後は,技能士の取得によって能力を証明された知財人材が増えると思います。多くの企業で技能士の地位が確立すれば,企業の人的資源の“見える化”につながるでしょう」(八木さん)。
ブリヂストンは,タイヤ・ゴム会社として世界最大級の売上高を誇り,2008年度の売上の73%は海外である。海外での知財関連業務も拡大しており,今後も同社で知的財産管理技能士が能力を発揮する機会は広がっていくだろう。

(文・品田茂=テクノアソシエーツ)