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知財パーソンの履歴書


山口晃史さんの場合 (大手通信会社勤務/知的財産部門所属)
[2009/08/25]



 山口晃史さんは,自身の実務能力の確認と業務範囲を広げる目的で,2008年に1級知的財産管理技能士を取得した。その経験や無効資料調査実績を評価され,今年春から大手通信関連会社の知的財産部主査として勤務,通信分野の特許調査業務を管理・サポートしている。将来は,国際標準化技術に関する特許訴訟や交渉などの知財実務の第一線で活躍しながら,法律と技術の狭間にある難題でも積極的に解決できる知財人材の育成にも積極的に関わりたいという。




特許庁長官の講演で知財に興味を持つ

 山口さんは立命館大学の理工学部で半導体界面活性についてのシミュレーションを学んでいた。当時は漠然と技術者になるつもりだったという。
 しかし,在学中に偶然聞いた荒井寿光・元特許庁長官の講演がきっかけで知的財産業務を志すようになった。知的財産業務の重要性を理解した山口さんは「感動しました。広く最先端技術を把握してその技術の保護・活用に携わることができ,技術開発競争力強化に貢献できる業務があるのかと。企業における知財の重要性も理解でき,知的財産業務を志望するようになりました」と語る。

 1995年に京都の計測機器メーカーに入社した山口さんは,先輩諸氏の尽力により念願の知的所有権部に配属された。入社1年目は,権利化に必要な書類や期限の管理といった“出願管理業務”を担当,特許事務所や特許庁との書類のやり取りを通じて特許制度や権利化のフローを学んだ。
 その後は,強い知財を創出する発明発掘業務や技術権利化業務,国内外特許の取得・維持・活用といった知財戦略会議の事務局補佐,サーチャー業務を担当した。「事業を有利に展開できるような権利を作るために,技術者と弁理士の間に立ち確保すべき権利範囲を戦略的に詰める作業です。また他社特許侵害を防ぐための特許(先行技術)調査も行いました。根気のいる作業ですが,ある海外特許訴訟を和解に導く資料を見つけ,部で社長表彰を頂いたときは,感嘆の声だけでなくその影響の大きさに驚きました」(山口さん)。
 この5年間で,知財業務の基本を先輩諸氏から指導を受け,知財業務を一通り経験できたことに今でも感謝しているという。

ビジネスモデル特許への興味が転職のきっかけ

 2000年頃,日本でビジネスモデル特許がブームになったことは記憶に新しい。当時,携帯電話を使ったビジネスモデル特許に強い興味を持ったことや自身の実務能力を試したい思いもあり,山口さんは転職を決意,大手通信会社の知的財産部に転職を果たした。

 2000年から2005年までは,研究開発センタに常駐して情報通信技術を学びながら技術権利化業務を担当。2005年から今年3月までは特許侵害警告や売込対応業務を担当。「この業務を通じて,訴訟に至らない交渉においていかに有効な無効資料が必要か,その材料をどの段階でどういった手段で交渉に用いるか,といった戦略を深く学びました。まさに先を読む力と知財的な課題を解決する力です。」(山口さん)。通信規格は各世代で複数の国際標準技術が並行して存在している。規格の改定経緯を調べ,規格の仕様と特許請求の範囲とを対比する業務をこなしていくうちに「もっと国際標準に関する専門知識を身に付ける必要がある」と感じた。そんな折,知財専門職大学院が『国際標準化戦略プロフェッショナルコース』を新設することを知り,山口さんは今春から仕事の合間を縫って通い始めている。

実務問題へ経験豊富な実務家による対策セミナーで対応

 山口さんは,実務の傍ら積極的に自身の知財スキルを確認している。特に重視しているのが,弁理士と知的財産管理技能士。弁理士取得を目指して勉強を続けながら,“実務能力を測る試験”として知的財産管理技能検定の前身である「知的財産検定」を受検,準1級(A評価)を取得。特例講習を経て1級知的財産管理技能士になった。山口さんは1級知的財産管理技能士を「知財にまつわる諸問題の解決能力を示す資格」と評価する。

 難関の1級受検に向けてどのように勉強したのだろうか。山口さんは(1)知的財産協会の各種研修,(2)公認1級対策セミナー,(3)代々木塾の『審査基準・審判便覧解説講座』を紹介してくれた。
 「知財協の欧米やアジアの知財制度や訴訟に関連する研修に参加しました。長期に渡る研修ですが,海外実務の基礎となる知識を習得できました。特に制度委員会が監修した『米国特許訴訟対応ガイドライン』はよくまとまっていると感じました。公認1級対策セミナーは1級合格への近道と言えます。セミナー講師は経験豊富で,実務で不足する分野があっても,権利化,契約,訴訟,リスク・マネジメントなどの頻出分野を効率良く勉強できました。『審査基準・審判便覧解説講座』は,弁理士試験対策としても有益ですが,実務でも役立つように的確に要点を解説しています。実務に役立つということは検定対策にも有効ということだと思います」(山口さん)。

技能士は法律‐技術間の溝を埋める「パテント・ハーモニー」

 山口さんは以前から常々「法律と技術には決して埋まらない溝がある」と考えていた。例えば他社と侵害訴訟が起きた場合,法律のプロである弁護士は法律で問題を解決しようとし,技術のプロである研究開発者は自身の開発技術(発明)と従来技術の知識を信じて疑わない。共に協力して立ち向かうべきなのに,両者の意見は平行線のままのことも。「両者の溝を埋めるのが知財プロフェッショナルの重要な仕事。1級技能士はプロとして両者間を調整するいわば『パテント・ハーモニー』の側面があると信じています」と山口さんは自身が作った言葉で1級技能士の意義を語ってくれた。
 山口さんは将来「パテント・ハーモニーとして質の高い業務をこなすと共に,今後知財業務や志す人や技術者に知財の重要性や素晴らしさを伝えていきたい」という。山口さんは,厚生労働省から知的財産管理技能検定の運営を受託した,知的財産教育協会が公募した「教材開発・編集関連業務協力者」に応募,その熱意が伝わったのか,書類選考を通過した。偶然聞いた講演で知財の重要性を知り職務として選んだ山口さんが,次世代の知財人材を育成しようと活動を開始した。
 パテント・ハーモニーを標榜する山口さんの今後の活動に期待したい。

(文・品田茂=テクノアソシエーツ)