![]() |
|
記事に関するお問合せは info.chizai-a@technoassociates.com Copyright (c)2004-2012 TechnoAssociates,Inc. All Rights Reserved. |
自著を語る「土生哲也氏インタビュー」 「知的財産」の分析手法:土生哲也著 中央経済社刊:2,800円 企業が保有する知的財産の価値をどのように評価するのか。企業価値を算定したり,ベンチャー企業などの成長戦略を考える上で知財の評価・分析手法が不可欠となりつつある。本書では,知的財産の分析手法について,その基礎的な考え方から,ベンチャー投資や公開業務,M&Aなど具体的なケースにおける知財評価のポイントについてわかりやすく解説されている。著者の土生哲也氏は,日本開発銀行(現日本政策投資銀行)および同行系ベンチャーキャピタルでの業務経験を経て,特許事務所を開業。事業を評価する事業家的視点,知的財産権実務を実際に手がける知財人として双方の視点を併せ持った弁理士として活躍しており,その持ち味がいかんなく発揮された好著である。 (聞き手:テクノアソシエーツ 加藤芳男)
本書はもともとは,金融機関などで事業評価や企業向けの投融資を担当している実務担当者を念頭において刊行されたものですが,当の金融機関における知的財産の評価手法は,まだまだ手探り状態,黎明期にあるといってよく,現場の実務はまだ殆ど何も手が付けられていない状況だと思います。ほとんどの金融機関で,相変わらず財務データだけが偏重された形で投融資の判断が行われているのが実態でしょう。
知財に対する視点が欠落していることが原因でビジネス上のトラブルが発生し,私のところにも相談が持ち込まれたりします。例えば,経営の行き詰った老舗の再生を手がけたり,名の売れたデザイナーのアパレル事業を引継いだりするケースを考えると,最も重要となるのは「のれん」や「ブランド」の価値です。何十年,場合によっては何百年も続いた老舗の「屋号・のれん」や,よく知られたブランドの名称やマークこそ,最も守るべき企業価値の源泉であるにもかかわらず,当の経営者やその老舗を担当する金融機関の担当者なども,そうした無形の企業価値について必要な対応を怠ってしまうことがあるようです。自分の会社の価値とは一体何なのか,ということについて一度じっくりと考えてほしいという意味で,まず企業経営者の方にこの本を読んでほしいと思っています。そうすれば,銀行マンなどから指摘されない,あなたの会社の本当の価値について新しい発見があるかもしれません。 企業価値とはお城の天守閣のようなもの 企業の価値とは,わかりやすく例えると,お城の天守閣のようなものだと思っています。砂上の楼閣という言葉があるように,外からの見栄えだけを良くしようと思ってもだめで,天守閣を高くりっぱに輝かせるためには,土台からまずしっかりさせなくてはなりません。そして,築き上げた天守閣を外敵から守るお堀の役割を果たすのが知的財産権です。知財の業務とは,石垣をつくり,堀を構築することに例えることができるでしょう。石を切り出し,運び組み上げる人,天守閣を守るために掘割を作る人,さまざまな力を合わせ,全体をマネジメントすることで初めて天守閣を高くそびえさせ,外敵から守って永続させることができるのです。 カブドットコムのケースが物語るもの 知財と企業価値をめぐる最近のトピックスとしてカブドットコムのケースがあります。 カブドットコムは,自社で独自に開発したネット上の自動売買注文処理システムに関する特許を出願していたのですが,その特許査定がおり,特許を取得したことを一つのきっかけにして株価を押し上げることに貢献することができました。 プレスリリースのあった日の上昇分を時価総額に換算するとなんと約500億円にも相当するのですが,地道な知財戦略を投資家にアピールして企業価値の向上に反映することができた一例と言えるのではないでしょうか。ただ,忘れてはならないのは,こうした成功の裏には,顧客との対話を通じた独自のシステム開発と地道な権利化へのプロセスがあったことです。足元をしっかりとさせる知財戦略があったから大きな成果を残せたということなのです。 本書をそうした成功につながる一歩,足がかりとして読んでいただければ大変うれしく思います。
|