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大手半導体製造装置メーカーで広がる全社的な知的財産意識の向上
アドバンテスト・知的財産部に聞く
[2007/07/05]

 半導体製造装置,テスト・システムメーカーのアドバンテストは,デジタル家電や情報通信機器に組み込まれている最先端の半導体デバイスの技術開発を,独自の計測技術で支え,メモリ・テスト・システムでは世界トップシェアを誇る。SoCテスト・システムでも,オープン化戦略を推進し,業界に対して新たなビジネスモデルを積極的に提案している。その一方で,グローバルな技術競争力を維持するために,知的財産部では研究開発部門とのコミュニケーションを強化,知的財産検定などを活用した知財研修を推進するなど,全社的な知財意識の向上にも努めている。従業員に対するこうした知的財産活動とその成果について,群馬R&Dセンタに拠点を置く同社 知的財産部に話を聞いた。
アドバンテスト 知的財産部長
上村知道氏
アドバンテスト 知的財産部長
上村知道氏

全社的な知的財産活動を強化されています。
 ここ数年,特に技術者に対しては,モチベーション向上と事業に繋がる質の高い発明創出を図るため,コミュニケーションの強化,職務発明規定の最適化,研修を活用した知財教育など,様々な取り組みを行なっている。

 コミュニケーションの面では,研究所(仙台),R&Dセンタ(群馬,埼玉,北九州)との連携を重要視し,技術者からの発明提案を待つのではなく,ディスカッションを通じた積極的かつ戦略的な発明の掘り起こしに努めている。
 例えば研究所の場合,以前は知財部員が1名常駐し,発明発掘のサポートを行なっていた。しかし,昨年からは月に2回,3,4名の知財部員が定期的に訪問している。研究開発の進捗報告を受けた上で,特許出しディスカッションを社外弁理士も交えて1日がかりで行なう。従来のように担当者個人の経験や能力に依存せず,短期集中で多角的な議論を展開する。通常,「発明届出書 → 明細書作成」というフローが社内ルールだが,最近では,発明届出書無しにこのディスカッションを通じて明細書を一気に仕上げてしまう。現在では,こうした“ディスカッション型”の明細書作成は全体の半分を占める。
 今後は,研究所と各開発部門間のコミュニケーションもより活性化させていこうと考えている。その媒介として,われわれ知財部の役割は大きい。

知的財産部が活動の拠点を置く,群馬R&Dセンタ知的財産部が活動の拠点を置く,群馬R&Dセンタ
武智吉信氏
知的財産部 戦略特許推進課
武智吉信氏
「研究所,開発部門との密なコミュニケーションを通じた発明の掘り起こし,明細書の作成に努めている」


 また,2005年4月に特許法第35条の改正が施行されたが,職務発明制度については,法改正施行の2年以上も前から整備を進めてきた。従業員の意見を聞くために100回以上もの協議会を開き,規定を練り上げ,2004年の施行にいたった。各開発部門,事業部門での評価,会社としての評価など,様々な視点を反映している。その後も,他社の事例や判例なども参考に改訂を重ねているが,その際は,従業員全体にもれなくコメントを求める機関を設置している。
 報償金,つまり職務発明による特許の会社への譲渡の際の,いわゆる“相当の対価”については,ワールドワイドでの製品の売上げをベースに,事業への貢献に見合ったかたちで算出している。出願国の決定は,マーケットでの価値,事業戦略,経営判断に依るところもある。そのため,どこか1カ国でも登録されていれば,同等の価値として当社では評価を与えている。
その他の部門についてはいかがでしょうか。
アドバンテスト社が提供するテスト・システム
アドバンテスト社が提供するテスト・システム
T2000LSメインフレーム
  営業やフィールドサポートの現場にも,積極的にアプローチしている。
 半導体業界をはじめ装置メーカー特有の事情でもあるが,当然製品は一般的な市場には出回らない。しかしその一方で,顧客の工場へ自社製品の修理に訪れた際,他社の部品が付いていたなんてことが海外ではよくある。外側からは見えづらい当社製品群の中でも,半導体デバイスとテスト・システムをつなぐDI(デバイスインターフェース)のように比較的目に見える製品の場合,コンパチ品が出やすい。そのため,われわれが海外の事業所を訪問した際には,特許侵害の着眼点を示した漫画を活用して現地担当者に注意を促すこともある。不正がなかなか表面化しにくい市場環境の中,こうした情報収集に努めるには,営業部門,事業部門,知財部門の密な連携は欠かせない。
 また,営業ツールとなる社外向け資料,販促物に記載されている技術情報や商標などに対して,知財面でのチェックも組織的に行なっている。訪問先での情報提供の範囲についても注意を呼びかけている。
従業員への知財教育には外部のリソースも積極的に活用されています。
「知的財産検定」の活用もその1つです
 これまでの従業員向けの知財教育は,主に部門単位で行なっていた。各事業部門,開発部門に「IP推進委員」と呼ぶリエゾンマンを配置し,まずその人材に知財教育を施すことで,各部門内の周辺人材への波及効果を図った。
 研修には社外のリソースも活用している。例えば,日本知的財産協会(JIPA)が主催する開発者向けの研修には,特許を出している技術者を中心に派遣している。また最近では,研究所,R&Dセンタに在籍する従業員を対象に,半導体集積回路,ディスプレイ回路のデバイス・プロセス技術の第一人者で,知財マネジメントにも精通する東北大・須川成利教授を講師に招いた研修も企画した。
江原治男氏
知的財産部 部長代理 弁理士
江原治男氏
「まずは各部門のキーパーソンへの知財教育を通じて,周辺への波及効果を狙った」

 「知的財産検定」を活用した研修は2年程前から導入し,過去2回30名規模で実施している。知財を学ぶにしても何か目標があった方がよいと考えた。特に2級の場合,特許だけではなく,その他幅広い知財分野の基礎的な実務知識を評価するということで,全社的に知財意識を高めたいと考えるわれわれの目的に合っていた。ただし,いきなり検定受検を推奨しても,実務経験のある知財部員以外は学習プロセスに困ってしまうことも予想された。そこで,本受検に加え,第3者団体が実施している「対策セミナー」「直前模試」の3つをセットにした研修プログラムを採用することにした。
 この研修導入に当たっては,人事部とタイアップして人事教育制度の一環として取り組んだことも追い風となった。知財分野においては,弁理士資格への奨励金支給制度があるが,知財検定1級の合格者に対しても同様に設けている。
 営業部門,管理部門も含め全社対象としたが,研究所を中心に知財知識が必要だと考える部門には積極的に声をかけ,部門のキーパーソンや意志のある者を選抜してもらった。IP推進委員の設置同様,研修受講者を中心とした知財意識の輪の広がりを狙った。今後は,製造ノウハウ保護の重要性も高まっていることから,生産技術部門にも推奨していきたいと考えている。
こうした一連の取り組みは,何か効果として表れ始めていますか。
徳永康男氏
知的財産部 戦略特許推進課
課長 副参事
 徳永康男氏
「知財部への具体的な質問が増えていることを,これまで以上に実感」
  開発部門も含め,日々の業務の中で知財部への問い合わせが質量ともに増えてきたことを実感している。例えば,特許クレームの技術範囲の解釈に関する相談や,大学を含む他社との共同研究開発での権利帰属に関する相談,社外向け資料作成時の引用に関する相談などである。
 また,研究所だけをみると発明届出書の提出件数が前年比2.5倍となっている。

 知財検定に関して言えば,合格した部門のキーパーソンたちは,一定レベルの専門知識を持った人物ということで,周辺の従業員から何かと相談を受ける機会が増えているという報告も受けている。こうした状況は,彼ら自身のモチベーションに繋がる。すぐ傍に実務のプロはいないものの,実務家との媒介となるこうした仲間の存在は心強い。一方,たとえ研修を受講していない者でも,こうした取り組みを全社的に公知にしているだけで,知財の重要性に対する意識が少なからず芽生え始める。多忙の中,課長レベルも研修に参加しているが,管理職クラスの参加には,各部門トップの理解が不可欠。知的財産活動強化に向けた土壌づくりは,確実に社内に広がっている。
(聞き手:池田英一郎=テクノアソシエーツ)

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