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提供:日経BP知財Awareness

知的財産は知財部門だけの問題ではあり得ない
内閣官房・知的財産戦略推進事務局長 荒井寿光氏
[2004/04/22]

 知財戦略の第一人者である荒井寿光氏に,日本の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。荒井氏は,日本の国策として2002年7月に策定された「知的財産戦略大綱」の仕掛人であり,現在も日本の知財戦略づくりの総本山である「内閣官房・知的財産戦略推進事務局」で事務局長を務めている。
 荒井氏は,知財経営における経営者の役割や,知財専門家に加えて,幅広い層で知財人材を育成する必要性について,熱っぽく語った。
(聞き手は山口 健=日経BP知財Awareness編集長)

外国追随時代の考え方はもはや通用しない
最近,知財に関する報道が増え,知財への関心が高まっているように思います。
 その通りだ。日経新聞の一面トップ記事は,つい2日前(4月7日)に知財分野の大きな記事を報道していた。「富士通がプラズマパネルの基本技術に特許侵害があったとして,同分野第二位の韓国サムスンSDIを日米で提訴した」とするものだ。特許や知財を企業経営のコアとする意思を,日本企業が鮮明に示したという点で,重要な事件だと言える。
 これまで多くの日本企業の経営にとって,特許は「文句を言われたときに対抗する」という防衛的な意味合いが強く,「クロス・ライセンスに持ち込むために,件数で勝負する」という意識が強かった。知財を経営のコアと感じない日本企業の対応に,私は危機感を感じていた。しかし,富士通の今回の提訴で,潮目が替わったと感じる。
 日本企業が外国企業の基本技術に追随し,特許といっても改良特許を考えるようなキャッチアップの時代には,知財をそれほど重視しない考え方でも通用した。しかし,日本が世界のフロントランナーとして,基本技術を開発し,基本特許を発明する時代が訪れた。プラズマパネルだけではなく,デジタル家電全般が,技術的にも世界の先頭を走っている。従来の考え方は,もはや通用しない。日本にはフロントランナーとしての知財戦略が必要だ。
内閣官房・知的財産戦略推進事務局長 荒井寿光氏
内閣官房・知的財産戦略推進事務局長
荒井寿光氏

現職として,内閣官房・知的財産戦略推進事務局長をはじめ,総合科学技術会議知的財産専門調査会委員,司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会委員,世界知的財産機関(WIPO)政策委員など多数の要職を務める。 東京大学法学部卒業,通商産業省(当時)入省,特許庁長官,通商産業審議官などを経て,2003年3月に内閣官房・知的財産戦略推進事務局長に就任。著書に「知財立国」(編著,日刊工業新聞社発行),「特許はベンチャービジネスを支援する」(発明協会発行)などがある。

知財報告書発行は市場と株主に対する経営者の責任
企業経営における知財のインパクトという観点で,知財情報開示指針に基づく「知財報告書」の作成について,どのように評価しますか。(関連記事「経産省の知財情報開示指針,2004年5月以降に大手13社が初めて採用」を参照)。
 知財報告書は,知財が企業経営にとって,どれだけの価値があるものかについて,投資家と市場に定期的に開示するもので,意義深い。知財はIR(Investor Relations:投資家向け広報)の大事な要素だ。そこで,知財報告書の数と内容について,企業にお願いしたいことがある。
 まずは,知財報告書を発行する企業数がどんどん増えることを期待したい。知財情報を投資家に開示することは,市場と株主に対する経営者の責任だ。研究開発費を売上高比で5%以上投入している企業は,知財報告書を発行して欲しい。
 知財報告書を作成する企業へのもう一つのお願いとして,他社との違いが明確にわかる内容として欲しい。「当社はこの技術に関するオンリー・ワン・カンパニーを目指す」とか,「当社はこの事業分野では二番手だが,ローコスト戦略で勝ち残る」とか,事業戦略の独自性を打ち出すことは,IRとして重要だ。

共通の物差しで大学の力をランキングする
 IRと言えば,早稲田大学や慶応大学など,大学が投資家を意識して,格付けを取り始めたことが注目される。大学にとっては,各種の活動成果を測る「共通の物差し」があると,現状の把握とモチベーションの向上につながるだろう。
 大学は現在,土地や建物の評価額ランキングの公表が始まった段階だが,今後は特許の件数,産学連携の件数,大学発ベンチャーの起業件数などが公表されるとよい。将来は,大学の研究能力,教育能力,産学連携能力の情報が開示され,こうした能力を物差しとした大学のランキングが公表されるようになって欲しいものだ。

知財分野の人材の物差しとして知財検定は有効
「共通の物差し」という意味で,知財分野の人材に関して,どう見ていますか。
 知財分野の人材育成と評価の共通の物差しとして,知財検定は有効だと思う。
 個人レベルでは,「テストをやる」と言えば,熱心に勉強するだろうから,知財を勉強するための動機付けになる。企業にとっては,何級を何人が保有しているのかが,その企業の力の一端を示すものとして活用できるのではないか。
 先行している検定制度,例えばTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)や英語検定,情報処理技術者試験などは,個人の意欲喚起と,企業の力の評価の両面で効き目がある。知財検定でもこうした効果が期待され,非常に良い取り組みだと思う。企業全体の知財力を底上げするために,幅広い層が関心をもつとよいだろう。

企業ではあらゆる部門で知財のスキルが必要
 企業では,知財・法務スタッフはもちろんのこと,経営者,技術者・研究開発者,企画・マーケティング・広報,営業,経理といった幅広い層で,知財のスキルが要求される。「事業と研究開発と知財は三位一体」であることを,経営者をはじめ,あらゆる部門の人材が理解する必要がある。
 例えば,研究開発者は,マーケティングのセンスをもって事業展開を考え,特許を申請する必要がある。経理部のスタッフは,知財によるIRを意識して,経理業務を行う必要がある。知財はもはや知財部門だけの問題ではあり得ない。