知財戦略の第一人者である荒井寿光氏に,日本の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。荒井氏は,日本の国策として2002年7月に策定された「知的財産戦略大綱」の仕掛人であり,現在も日本の知財戦略づくりの総本山である「内閣官房・知的財産戦略推進事務局」で事務局長を務めている。
荒井氏は,知財経営における経営者の役割や,知財専門家に加えて,幅広い層で知財人材を育成する必要性について,熱っぽく語った。
(聞き手は山口 健=日経BP知財Awareness編集長)
外国追随時代の考え方はもはや通用しない
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最近,知財に関する報道が増え,知財への関心が高まっているように思います。 |
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答 |
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その通りだ。日経新聞の一面トップ記事は,つい2日前(4月7日)に知財分野の大きな記事を報道していた。「富士通がプラズマパネルの基本技術に特許侵害があったとして,同分野第二位の韓国サムスンSDIを日米で提訴した」とするものだ。特許や知財を企業経営のコアとする意思を,日本企業が鮮明に示したという点で,重要な事件だと言える。
これまで多くの日本企業の経営にとって,特許は「文句を言われたときに対抗する」という防衛的な意味合いが強く,「クロス・ライセンスに持ち込むために,件数で勝負する」という意識が強かった。知財を経営のコアと感じない日本企業の対応に,私は危機感を感じていた。しかし,富士通の今回の提訴で,潮目が替わったと感じる。
日本企業が外国企業の基本技術に追随し,特許といっても改良特許を考えるようなキャッチアップの時代には,知財をそれほど重視しない考え方でも通用した。しかし,日本が世界のフロントランナーとして,基本技術を開発し,基本特許を発明する時代が訪れた。プラズマパネルだけではなく,デジタル家電全般が,技術的にも世界の先頭を走っている。従来の考え方は,もはや通用しない。日本にはフロントランナーとしての知財戦略が必要だ。 |
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内閣官房・知的財産戦略推進事務局長
荒井寿光氏
現職として,内閣官房・知的財産戦略推進事務局長をはじめ,総合科学技術会議知的財産専門調査会委員,司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会委員,世界知的財産機関(WIPO)政策委員など多数の要職を務める。
東京大学法学部卒業,通商産業省(当時)入省,特許庁長官,通商産業審議官などを経て,2003年3月に内閣官房・知的財産戦略推進事務局長に就任。著書に「知財立国」(編著,日刊工業新聞社発行),「特許はベンチャービジネスを支援する」(発明協会発行)などがある。 |