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提供:日経BP知財Awareness

「知財教育には,一定水準の検定や教育が必要」
日本弁理士会会長,木下實三氏インタビュー
[2004/05/11]

 知的財産権の創造・活用・保護のサイクルの中で,弁理士の担う役割が重要度を増している。知財に関わる人材の育成もその一つである。日本弁理士会会長である木下實三氏,副会長の吉田芳春氏,井上 一氏に,知財人材の育成に向けた取り組みの現状を聞いた。
(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

セミナーを中心に知財人材を育成
日本弁理士会では,わが国の人材育成に向けてどのような取り組みを行っているのか。


 日本弁理士会が1999年に設立した「知的財産支援センター」を通じて,知的財産に関わる普及活動を行っている。知財マインドの醸成と基盤整備が目的だ。日本弁理士会所属の約4,000名の弁理士が支援員として活動している。
 このほか,「特許出願援助制度」も費用の援助により出願・権利化を通して発明者の人材育成につながっている。これは,個人に対して特許出願に係る費用および審査請求に係る費用を日本弁理士会が援助する制度だ。
知的財産支援センターの活動はどのようなものか。


 主な活動には,セミナーの開催や講習会への講師派遣がある。セミナーは全国各地で開催している。2003年度は延べ271名の弁理士が講師となり,1,601名が受講した。セミナーは,企業の実務担当者や一般の方というように,受講者によって扱う内容や専門度を区分している。例えば,中小企業・ベンチャー企業の知財担当者を対象にしたセミナーの場合,かなり実務に即した内容になっている。このほか,知的財産権の取得や活用に対して支給される助成金・補助金などの情報も提供している。



教育機関へ弁理士を派遣して知財教育を支援
一般の人に向けた取り組みはどのようなものか。


 セミナー開催に加えて,大学などの教育機関へ弁理士の派遣支援を進めている。2003年度,全国86の大学に,延べ131名の弁理士を講師やアドバイザーとして派遣した。2003年度は,文部科学省,特許庁,社団法人発明協会との共催で「パテント・コンテスト」を初めて開催した。大学生や高校生,高等専門学校生が自分たちの発明を特許として申請するもので,参加者のみならず学校関係者からも非常に好評だった。2004年度も開催する予定だ。


 パテント・コンテストでは,出願のための明細書作りや特許電子図書館(IPDL)を利用した特許情報の検索を体験する。権利化のプロセスを学んでもらうことが目的だ。


 さらに,小・中・高校への取り組みがある。2003年度は,弁理士が自分の出身学校に出向いて,身近な知財を用いて指導を行う講座を開催した。NHKのテレビ番組『課外授業ようこそ先輩』を想定してもらうとわかりやすいと思う。
 このほか,パンフレットやポスターを制作して,年に4回程度,全国の学校機関に配布してきた。
2004年度は地域を重視した活動を展開
2004年度の取り組みとして,どのようなものを計画しているか。


 先に説明した活動や,全国で開催している無料の特許相談会など,従来の活動を拡充する。さらに,新しい取り組みを開始する。


 新たに日本弁理士会内に「地域活動促進本部」を立ち上げる。各地域の経済産業局や地方公共団体との連携を深める。2001年度に経済産業省が立ち上げた地域産業重視型の産学官連携事業「産業クラスター計画」,2002年度に文部科学省が開始した産学官連携事業「知的クラスター創成事業」,こうしたプロジェクトとのタイアップも検討している。これらを通じて地域における取り組みを強める。地域振興に知財をさらに活用してもらいたい。


 地域とのつながりという観点からは,会長・副会長が各地を訪問し,地域の人々と知財について語り合う「タウン・ミーティング」を2003年度にスタートした。2003年度は2回開催したが,2004年度は年4回と倍増する。
 さらに広報センターでは,マスメディアの関係者を対象として,知財への理解を深めてもらうように,勉強会を年2回ほど開催する予定だ。
「知的財産検定」は日本弁理士会による後援ガイドラインの適用第1号
日本弁理士会は3月に「知的財産検定」の後援を決定した。これはどのような趣旨か。


 知財教育の進め方を考えたときに,一定水準の検定やそのための教育が必要だとの認識があった。弁理士は非常に高度な知財知識を持っているが,一般社会においてはそこまでの知識を必要としないことが多い。「弁理士資格を取得するほどのレベルではないが,実務担当者として必要」といった知識レベルが求められる場合が少なくない。
 日本弁理士会の活動だけでは,こうした幅広い層に向けた知財教育をカバーすることは難しい。それゆえ,信頼できる団体が,こうした機能を担ってくれることを歓迎している。だが,弁理士法によって弁理士にしか認められていない弁理士業務を侵し,弁理士法違反を助長するような人材の育成では困る。こうした法制度を理解し,かつ遵守した検定を行ってくれる団体の検定ならば,日本弁理士会として後援していく意向だ。こうした観点で,「知的財産検定」の後援に先立ち,日本弁理士会では2003年度,後援や協賛を認定するためのガイドラインを策定した。
具体的に,後援にはどのような要件が必要なのか。


 弁理士法に抵触しないことに加えて,(1)検定事務を継続して行うこと,(2)日本弁理士会が推薦する弁理士が少なくとも1名以上関与していること,(3)弁理士法違反団体との契約をしていないこと,などが要件に挙げられる。日本弁理士会では,ガイドラインに基づいて委員会で審査を行う。
 そして,こうした要件を満たした検定の第一号が「知的財産検定」ということだ。今後も同様のケースについては,このガイドラインに基づいて厳格に対処していく。
「適度な難しさがある妥当な検定」
第1回知的財産検定における受検者の属性について,どうみるか。


 最初に,検定の結果に関する私たち3人のコメントは,日本弁理士会を代表しているものではなく,私見であることをお断りしておく。
 受検者の比率は,企業での知財業務の従事者の比率を比較的妥当に反映していると思う。面白いのは,営業部門に所属する受検者が5%いること。また,企画部門に属する受検者が多いことも興味深い。今後,知財を使った商品開発を行ったり,会社の経営戦略に知財を用いようという現れ,とも見ることができる。


 営業部門の人の場合,業務を進める上での知識として知財を学ぼうという姿勢があるかもしれない。また,マネジャーなど管理職以上の人は,経営的な観点から知財をみているのだろう。
合格率と所属部署の相関性については,どう見るか。


 実際の業務との関わり度合いで,分野に得手不得手がある。誰でも合格する検定ではなかったという点で,適度な難しさがある妥当な結果だと思う。
 知財関連部署は,やはり特許法が強いようだ。点数から比較するに,研究・開発部門はもっと特許法を知っていてもよいように感じる。
 ただ,検定結果に限ったことではないが,企業規模や地位,あるいは所属部門によって,得意分野の偏りや知識量の差が生じるものだ。例えば,一口に「技術部門」と言っても,研究開発に近いか,あるいは製造ラインに近いかで,知財に関する業務も知識も異なる。
「知財知識を持つ人が増加することは好ましい」
検定制度の意義について,どう考えるか。


 個々人が知財に関する基本知識を学習する際の,インセンティブになると思う。また,企業にとっては社員の評価手段にもなる。あるいは,企業における人材の流動化が進む中,自分の知識レベルを示す指標としても活用できるのではないか。


 知的財産検定はまだ1回目が終わったばかりということで,今後,さらに検定問題の内容や制度のあり方を精査していく必要があると思う。


 知財に関する知識を計り,水準の一定化を図る客観的な物差しとして,こうした検定制度は有効だと思う。
 知財知識を持つ人が増加することは好ましいことだ。例えば,弁理士業務においても,クライアント側に知財の基本的な知識があると,仕事が非常にやりやすくなる。加えて,「知財立国」として日本全体の知財知識を向上させるという部分でも意義があると思う。それこそ,日本弁理士会が「知的財産検定」を後援する理由の一つでもある。

木下實三氏
1966年新潟大学工学部機械工学科卒,1974年弁理士登録。弁理士会常議員,同副会長,同常議員会副議長,日本弁理士会弁理士倫理委員会委員長,同総括副会長などを経て,2004年4月に日本弁理士会会長に就任。木下特許商標事務所所長。61歳。
吉田芳春氏
1970年日本大学法学部法律学科卒,1976年弁理士登録。弁理士会常議員,同広報委員会副委員長,日本弁理士会産業競争力推進委員会副委員長などを経て,2004年4月に日本弁理士会副会長に就任。吉田国際特許事務所所長。56歳。
井上 一氏
1977年金沢大学工学部機械工学科卒業,1983年弁理士登録。弁理士会常議員,同広報委員会委員長,日本弁理士会知的財産支援センター運営委員を経て,2004年4月に日本弁理士会副会長に就任。井上・布施合同特許事務所パートナ弁理士。49歳。