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提供:日経BP知財Awareness
知的財産に携わる人材育成に必要な「知財スキル標準」を確立する
金沢工業大学大学院・工学研究科教授の杉光一成氏が提言
[2006/01/10]

 国が推進する知的創造サイクルを支える人材の効率的な育成と人員の増加が重要視されている中,従来の弁理士や企業の知財部員などの職種,およびそれらに必要とされる能力を明確にし,職種ごとに到達レベルを設定しようと活動する「知財人材のスキルの標準化に関する研究会」が2005年9月発足した。
 本研究会は,経済産業省の委託事業に採択され,研究成果として確立を目指す「知財スキル標準」は,人材育成や人事評価などへの活用が期待されている。本研究会は,金沢工業大学大学院知的財産科学研究所(工学研究科知的創造システム専攻内/東京・虎ノ門)が中心となり,大学,産業界,官庁といった産学官に幅広く参加を呼びかけ,実現したものである。
 この「知財スキル標準」に関する研究活動の概要と将来像について,同大学大学院教授の杉光一成氏に聞いた。
(聞き手は品田茂=日経BP知財Awareness編集)


「知財スキル標準」の制定が,知財人材の質と量を向上させる鍵
 「知財人材のスキルの標準化に関する研究会」は,政府が今年6月に発表した「知的財産推進計画2005」で謳われている知財人材のスキルの明確化と育成,増員を推進する計画に沿い,9月に経済産業省の委託事業として,研究活動がスタートした。
 従来の知財人材のスキルは,単純に経験年数によって語られるケースが多かった。しかし,実際の知財業務では様々な問題が複雑に絡み合うケースが多く,「どのようなスキルが要求されるか」,という議論はされてきたが,具体的な研究まで進んだ例はなかった。今回の研究活動は,「知財人材は,技術と法律を理解しなければ駄目だ」,というかつての抽象的な議論に終始しない。知的財産に関する職種や専門分野ごとに,「どのようなスキルが求められ,レベルはどの程度か」,をより具体的に議論し,知財業務の能力指標の業界標準となる「知財スキル標準」の制定が,今回我々が目指す研究成果である。
 既にIT業界では「ITスキル標準」が普及し,現在では,国内で約4分の1のIT関連企業が人材育成などに活用していると言われている。本研究会を発足させる以前に,この「ITスキル標準」を本大学院独自で研究していくと,当時の経緯や目的が,現在の知財分野の状況と似ていることが判った。

 本研究会でも,国内で「ITスキル標準」策定に携わった経済産業省の担当者がオブザーバとして参加しており,同スキル標準を参考に「知財スキル標準」の研究を重ねている。「知財スキル標準」を制定し,産業界の中で普及させることで,国の掲げる知財人材の質の向上と人員増加を効率的に進めていくことが期待できる。
 「知財スキル標準」は,企業では人材育成や人事考課,事業における人材の配置の目安になる。また,知財業務のプロフェッショナルを目指す個人には,「何をどのくらい学べばいいのか」という具体的な指標になり,我々大学院のような教育機関にとっても提供する教育サービスが「知財スキル標準」においてどのレベルに属するのか,を学生に対して明確にアピールすることができる。
 例えば,訴訟関連業務に必要なスキルに対して仮に7つのレベルを設定する。すると企業では,「現状,わが社の訴訟担当のレベルは2であるが,自社が目指す事業戦略に照らすと,全体的にレベル5までスキルアップさせる必要がある」など,「知財スキル標準」を参照した教育プログラムを準備することができる。

知財人材の職種と専門分野,レベルを明確にすることが研究の第一歩
 経済産業省の委託事業としての本研究会の第1フェーズにおける目標は,まず知財スキルのフレームを作ることである。そこで,産学官全体を網羅するフレーム作りを目指し,東芝,パイオニア,キヤノン,旭化成,味の素,ジャパン・デジタル・コンテンツ信託,小学館,ソニーミュージックエンタテインメント,みずほ情報総研,東京大学,東北大学といった各業界の知財責任者や産学官連携担当部署などに参加を呼びかけ,委員会を構成した。
 研究の前提として,知的財産に関連する具体的な職種として,(1)戦略関連(2)管理関連(3)法務関連(4)特許調査関連(5)特許関連(6)外国特許関連(7)事務管理関連(8)意匠関連(9)商標関連(10)渉外関連(11)訴訟関連(12)教育関連といった職種に分けられると仮定した。
 「知財スキル標準」のフレームは,横軸に「職種」のパラメータを設定し,更に「専門分野」に分ける。縦軸では「レベル」をパラメータとし,2次元の表で表現する予定だ。そのための第一歩として,我々は2006年3月までに,既存の知財関連業務を抽出し,細分化された業務とレベルのポジショニングを設定する。
 9月の第1回の研究会では,本研究会の事務局である本校知的財産科学研究所から,研究の前提となった「ITスキル標準」の詳細について説明し,委員の間で意識を合わせ,本研究会の目標を共有した。そしてまず知的財産関連の「職種」と「専門分野」についての産業界の実態を把握するために,電子,食品,化学,機械,医薬,コンテンツなどといった各分野,合計100社を対象にアンケート調査を実施した。実態と乖離すれば標準となる指標として機能せず,実態と近すぎても強化目標の方向性の指標として新たに設定できない恐れがある。
 11月17日に開催された2回目の研究会では,収集中のアンケートに加え,参加企業の代表から,社内における知財人材のスキルや配置の状況,実際に社内で行われている教育の現状についてのヒアリングを実施した。12月14日に開催された3回目の研究会では,実施したアンケートとヒアリングの結果を解析し,将来の知財人材像のあるべき姿を政策的な観点も交えて,具体的な職種の検討や専門分野の分類,各レベルの達成度指標項目を検討した。

 今後は,2006年3月の委託事業終了までに,「知財スキル標準」のパラメータにおいて縦軸と横軸の交差する部分,すなわち専門分野ごとに求められる能力を,具体的に示したサンプルを1つ作成する。
 2006年4月以降に予定されている本研究会の第2フェーズは,今回の成果を元に,全ての職種について「知財スキル標準」の中身を具体化,体系化していく予定だ。知財人材に求められるスキルは,他の分野同様に時代と共に常に変化し,常に新しい職種が生まれてくる可能性もある。したがって,1年制の社会人大学院である当大学院でも,そうした時代ニーズに合った旬のカリキュラムを展開している。「知財スキル標準」についても時代の流れに応じて毎年パラメータを見直し,更新していくことも必要だろう。