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提供:日経BP知財Awareness

知財の問題は裁判ではなく交渉で解決せよ
産業界出身の知財の重鎮 丸島儀一氏に聞く(1)
[2004/05/20]

 「知財戦略による事業の成功」で先鞭をつけた,産業界の先駆者である丸島儀一氏に,わが国の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。丸島氏は,「突破するのは不可能」とされた米ゼロックスの複写機の特許を徹底的に調査して,闘いを挑み,キヤノンの複写機事業をグローバルな成功に導いた実績をもつ。
 丸島氏は,知財の問題を解決するために,裁判より交渉が事業にとってメリットがあると論じた。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)

キヤノンとゼロックスは知財で闘った
 私が長く勤めたキヤノンは,先行開発した技術のメリットを生かして事業展開することを旨とする,研究開発重視型の企業である。私が入社した1960年代のフィルム・カメラは技術的に飽和していたため,カメラ・メーカー各社はそれぞれの知財を活用して,棲み分けることができていた。
 これに対して複写機では,米ゼロックスが競合他社が事業に参入するのを防ぐために,知財を頑丈な障壁として活用していた。ゼロックスは,知財の活用という点で,理想郷として参考にすべき対象であった。
 ゼロックスの既存の知財に対抗するために,キヤノンは当時,技術的に伸び盛りだった電子写真技術に着目した。キヤノンは,複写機事業を始めようとした時点から特許を意識していたのだ。キヤノンは知恵を絞り,ゼロックスの特許に抵触しない方法を見つけ,交渉によりゼロックスに認めさせた。ゼロックスの特許の突破に成功した技術者は,「自分の研究開発成果は他社に突破されたくない」という意識で知的財産の形成活動に取り組んだ。
 こうした技術者が経営幹部となって,現在のキヤノンを築いてきた。キヤノンは研究開発者が知財を考え,知財部門が研究開発に入り込んで,研究開発と知財を事業に連動させてきた。
産業界出身の知財の重鎮 丸島儀一氏
丸島儀一氏のプロフィール
弁理士。早稲田大学客員教授。キヤノン顧問。
早稲田大学卒業後,キヤノンカメラ(現キヤノン)入社,弁理士登録,特許部長,特許法務センター所長,専務取締役を経て,2000年から同社顧問。各種団体の知的財産関連の要職や委員を歴任しているほか,2004年1月から知的財産検定・検定委員会検定委員を務めている。
著書「キヤノン特許部隊」(光文社発行)では,キヤノン入社以来,一貫して知財分野に携わり,米ゼロックスに闘いを挑み,複写機をキヤノンの新規事業として成功に導いた経緯を語っている。共著「知財立国への道」(ぎょうせい発行,内閣官房・知的財産戦略推進事務局編)では,「ものづくり」を通じた知財立国について論じている。

最終手段である裁判の前に交渉で解決せよ
 知財に関する裁判は,ライバルの事業を中止させるときに決意を込めて行うべきものだ。裁判は,事業の邪魔になる面がある。エース級の技術者が時間を奪われることになるからである。キヤノンは裁判よりも交渉で解決することを優先させていたので,弱腰と批判されることもあった。
 しかし実際には,マスメディアに明らかにならないところで,他社と強気の交渉をし,交渉で事業を止めてもらったことも含め,自社の事業を有利に導いた例は多い。裁判は最終手段であり,その前に交渉で解決するのが正しいやり方だと考えている。
 他社の事業参入を阻止するには特許のとり方が重要である。自社の基本特許の期限切れ後も,他社の事業参入を阻止する特許網の形成が必要だ。他社の事業参入を阻止するには,参入の初期に行動を取れることと交渉能力が重要となる。お金を取る交渉に失敗して提訴するのは,極めて効率が悪い。

※  この記事は,2004年3月に早稲田大学で開催された「産業創生のための知財戦略セミナー」における丸島儀一氏の基調講演「日本の知財戦略」の講演記録をベースとして,日経BP知財Awarenessが丸島氏への追加取材を元に大幅に加筆,再構成をし,まとめたものです。

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