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提供:日経BP知財Awareness

1級合格のカギは「バランスよい実務能力」
知的財産検定委員会委員・末吉 亙氏に聞く(上)
[2004/10/19]

 第3回知的財産検定(2004年11月14日開催)で新たに実施される「1級(特許)」に注目が集まっている。知財実務の経験者を主な対象とする1級検定について,同検定の検定委員を務める弁護士の末吉 亙氏に,(1)1級検定のコンセプトと試験の概要,(2)受検に当たっての留意ポイント,を中心に聞いた。
(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

1級検定のコンセプトと,試験を通じて測定する能力は,どのようなものか。
 1級検定の趣旨は,「業務の中で直面する問題を解決する能力を問うこと」である。特に「問題を解決する能力」を重視する。「弁護士や弁理士と協働で問題解決に当たることができる」ためには,場合・内容によっては弁理士や弁護士とほぼ同レベルで問題を理解して解決する能力を持つ必要がある。
 こうしたコンセプトに基づいた結果,私たち検定委員の目から見ても,非常に高レベルでかつ実務的な試験になったと考える。
1級検定は,どのような人が受検するのに適しているか。
 「実務経験を一定以上持っている人」が受検の対象になる。ここでいう実務経験とは,単純な勤務年数を意味していない。特許に関する総合的な実務能力,具体的には(1)国内での出願関連業務,(2)海外への出願関連業務,(3)特許に関する契約および係争業務,この3つについての経験をバランス良く持っていることが最も望ましい。
問題はどのような形式で出題されるのか。
 設問の前提となる事例は約20例である。1事例あたり約3問ずつの出題を目安として,全60問になる。問題解答はマークシート形式で,試験時間は180分である。出題範囲は,特許に関する知識が網羅されており,相当広範囲におよぶ。受検を検討している人は,試験要項などを利用して出題項目を確認しておいたほうがいい。
 事例と設問の具体的な構成については,知的財産教育協会のWebサイトで公開されているサンプル問題が参考になる。
知的財産検定委員会委員・末吉亙氏
知的財産検定委員会委員
末吉 亙氏
森・濱田松本法律事務所パートナー。1975年駒場東邦高等学校卒業,1981年東京大学法学部卒業,1983年弁護士登録,第二東京弁護士会所属。日本弁護士連合会(日弁連)の知的財産政策推進本部事務局次長を務めるなど,知財関連弁護士の第一人者である。主な著書・論文は,『商標法』,「高度情報化社会と法律実務」,「バイオ法研究と検討課題」,「『知的財産戦略大綱』と今後の課題」など。
2級検定との比較では,1級のレベル感はどのようなものになるのか。
 1級と2級の間には非常に大きな差がある。すでに2級に合格した人は,2級のイメージにとらわれず,新たな試験に挑むつもりで自己能力を研磨してほしい。加えて,2級が実務における問題の「発見」に重点を置くのに対して,1級は「解決」に重点が置かれる。
 こうした問題設定の本質を意識して受検してほしい。
試験問題を検討する際に,検定委員会では特にどのような点に留意したのか。
 問題策定に当たって,まず30例以上の事例およびそれに伴う問題を準備した。その後,各事例を詳細に検討して最終的に約20例を厳選した。問題選択のポイントは,(1)簡潔かつ適切に出題領域をカバーしていること,(2)いわゆる「引っかけ問題」のような試験テクニックに頼る問題ではないこと,(3)実務の現場に即した内容でかつ担当者として必須の能力を測定する問題であること,である。このような基準に基づいて,精査を進めてきた。
試験問題はすべて実際に起こった事例に基づいているのか。
 その通りである。当然,問題の背景や条件など詳細部分は変更しているが,エッセンスとなる論点を残すことには十分配慮している。事例の収集にあたっては,知財業務において典型的な事例から最近のトピックス的な事例までをカバーしている。
 事例の種類は当然ながら今後も増えると予測する。その意味では,受検者は1級検定を通じて知財実務の最前線に触れることができる。
受検に際して気をつけるべき点,対策としては,どのようなものがあるか。
 1級検定は「専門的」ということから出題範囲を狭く感じるかもしれないが,各項目で問う内容はとても深い。そのため,実際の出題範囲は非常に広い。加えて,各分野で高レベルな実務能力が要求されることから,暗記など「一夜漬け」の学習では対応できない。
 さらに1級認定を目指すならば,各分野の能力をバランスよく発揮して得点を積み上げなければならない。手強いが,言い換えれば「骨のある」試験である。
 個人的には,解答時間を慎重に配分して効率よく解答することが非常に重要だと考える。時間を有効に利用しない限り,余裕を持って全問を解くことは厳しいと思う。
 試験対策としては,今一度自分の実務能力を出題範囲に照らし合わせて点検して,受検に臨むことが有効である。各分野の実務的な要点を確認するためには,公認セミナーなどの利用も1手段である。
1級検定の意義はどのようなものか。
 「実務」と一言で表現しても,その内容や解決方法,考え方は企業によって大きく異なる。1級,2級を問わず知的財産検定の受検を通じて,自己の能力と各分野で標準的に必要とされる能力との距離感を,客観的に測定し,認識することに意義があると思う。社内あるいは部署内の基準だけでは,「フェアに判定された能力か」あるいは「どこにおいても通用する能力か」を判断することは難しい。
 1級についていえば,高度でかつ総合的な実務能力を持った人が級の認定を受けることができる。これは,第3者に対して自己能力と専門性を示す際に非常に有効である。