知的財産を仕事に活かす! 検定合格を徹底サポート
記事に関するお問合せは
info.chizai-a@technoassociates.com

Copyright (c)2004-2013
TechnoAssociates,Inc.
All Rights Reserved.


TechnoAssociats,Inc.



<Open Innovation静岡>中堅企業が地域経済を牽引、有望ビジネスを情報発信



改正された不正競争防止法は,
企業の知財戦略に対して大きなインパクトを与える

森・濱田松本法律事務所 弁護士 末吉 亙氏が提言
[2006/02/02]

弁護士 末吉 亙氏 企業内の知的財産の保護と活用を進めていく上で,トレードシークレット(営業秘密)の重要性に対する認識が高まっている。その背景に,人材の流動化が進んだことで,営業秘密が社外に流出する事件が国内外で頻発したことがある。特許化しにくいノウハウが流出する事態に対する危機感が高まり,2005年11月に施行された改正不正競争防止法では,営業秘密の保護強化が打ち出された。改正不正競争防止法のポイントとこれからの知的財産戦略のあるべき姿について森・濱田松本法律事務所の弁護士,末吉 亙氏に聞いた。
(聞き手:知財ナビ編集部)


「不正競争防止法の改正点について
 2005年11月に施行された改正不正競争防止法は(1)営業秘密の保護強化(2)模倣品・海賊版対策(3)関連法令の改正を骨子としている。ここでは(1)営業秘密の保護強化について述べる。
 改正の主なポイントとしては,今までは処罰範囲外だった国外犯への処罰規定の新設,退職者による営業秘密侵害行為に対する刑事罰の限定的拡大,個人のみならず,その個人が属する法人までも罰することができる両罰規定の新設,転職者の刑事罰の新設が挙げられる。(関連記事)これに伴い,経済産業省の「営業秘密管理指針」も2005年10月12日に改訂され,「営業秘密管理指針」,「営業秘密管理指針概要」として公表されている。

営業秘密の管理を怠ると,当事者も企業も罰せられる
 今回の改正で,弁護士や企業の実務家から見て最も影響力があると考えられているのが,「両罰規定」の新設である。
 営業秘密管理には,自社の営業秘密をどう管理するか,すなわち営業秘密の管理ポリシーと運用基準が要求される。「両罰規定」が入ることによって,営業秘密管理を疎かにしていると,企業としても罰せられる可能性がでてきた。
 特に,「自社の営業秘密を保護する」だけでなく,「他社からの意図せざる営業秘密の流入」に関しても管理することが求められることになり,2005年に改訂された「営業秘密管理指針」の見直し作業においても,この点への対応が極めて重要なポイントになっている。 例えば,中途採用者a氏が,転職前の企業A社の営業秘密を,転職先企業B社に以前より在籍しているb氏にそそのかされて開示し,その開示によりA社の営業秘密を取得したb氏がその営業秘密を不正使用する場合,b氏の行為によりB社に「両罰規定」が適用され得る。企業においては,「営業秘密管理指針」,「営業秘密管理指針概要」をよく理解し,自社の秘密情報管理規程に盛り込み,かつ,これを遵守する必要がある。

個人情報保護法への対応が,予行演習になっている
 多くの企業は,営業秘密の管理について既に予行演習は終了しているはずだ。というのも2005年4月に「個人情報の保護に関する法律」いわゆる個人情報保護法が施行され,それをきっかけに企業内の情報管理のあり方が根本的に見直されたからだ。そのことが結果として今回の不正競争防止法への対応のトレーニングになったと思う。
 個人情報保護法にて規定される「個人情報取扱事業者」は,個人情報の取得,保管,利用及び外部への提供において法的義務を背負うことになった。同様に,営業秘密管理では,情報へのアクセス管理や秘密情報の定義とその管理方法を,細かく決めて運用することが必要になった。個人情報と営業秘密の違いはあるが,情報の管理ルールの策定には似ている点も多い。営業秘密の保護に関するルール作りを今後進めていくにあたっては,個人情報保護法に対応した経験が大きく役立つことになるのではないだろうか。別の言い方をすれば,個人情報保護法への対応が進んだ今こそが,営業秘密の保護を目的とした新しい「情報管理規程」を整える絶好の機会といえる。
 「情報管理規程」の策定に関しては,営業秘密の保護に詳しい弁護士などのアドバイスを受けることも有効な手段だろう。

知財戦略は,「権利化とノウハウの保護」の二刀流で行うべきだ
 現行の特許制度では,出願したものは公開されるのが大原則であり,公開の見返りとして排他的権利である特許権が与えられる。特許化は知財を守る基本ではあるが,公開に馴染まない知財もある。また,特許制度をどんなに整えたとしても,特許権で守りきれないものがある。例えば,一般に「方法特許」の侵害は立証が非常に難しい。侵害を立証できない特許権は「画に描いた餅」になってしまう可能性もある。したがって企業の知的資産を守るためには振り分けが必要だ。すなわち,(1)特許による権利化を進めるのか(2)営業秘密の管理体制を整備し,ノウハウとして保護するのか,いずれかを適切に選択することが求められる。今後,知財戦略に対する理解が深まれば深まるほど,営業秘密としてノウハウを保護する戦略は出願戦略と同等に重要だということが,益々認識されてくるだろう。
 営業秘密管理について,業界団体や企業からの問い合わせや相談を受ける機会が増えている。今回の法改正も一助となって,営業秘密が会社の重要な知的財産であるという認識が急速に広がってくるだろう。営業秘密について考えるということは,実はその企業のコアコンピタンスは何かを考えることに通じている。その意味で,営業秘密管理のあり方を見直すことは,その企業の強みを再認識し,知財戦略全体を強化することにつながるだろう。


末吉 亙氏 プロフィール
森・濱田松本法律事務所パートナー。1981年東京大学法学部卒業,1983年弁護士登録,第二東京弁護士会所属。日本弁護士連合会(日弁連)の知的財産政策推進本部事務局次長を務めるなど,知財関連弁護士の第一人者である。
主な著書・論文は,『商標法』,「高度情報化社会と法律実務」,「バイオ法研究と検討課題」,「『知的財産戦略大綱』と今後の課題」など。