知財ナビ
<Open Innovation静岡>中堅企業が地域経済を牽引、有望ビジネスを情報発信
記事に関するお問合せは
info.chizai-a@technoassociates.com

Copyright (c)2004-2013
TechnoAssociates,Inc.
All Rights Reserved.


TechnoAssociats,Inc.


金沢工業大学大学院・知的創造システム専攻

【修了生インタビュー】 田中康之さん
ワンソース・マルチユース時代のリーダーに
[2006/11/17]

田中康之さん
TBSテレビ
編成局 コンテンツ&ライツセンター
メディアライツ推進 部次長

田中康之さん
 民間放送局で,コンテンツの活用に付随した様々な権利処理を担当している田中康之さんは,金沢工業大学大学院 知的創造システム専攻(知的財産プロフェショナルコース)の第2期修了生。修了後の現在も仕事の傍ら,「放送コンテンツの資産評価」をテーマに研究に取り組んでいる。インフラのIT化とコンテンツのデジタル化の進展は,コンテンツのマルチユースを促進し,コンテンツの流通,ビジネス機会の拡大をもたらした。その反面,著作権侵害などによるリスクも表面化しており,ビジネスとしての成否を考える上で,「法律」,「ビジネス」,「テクノロジー」の総合的理解は欠かせない。保有するコンテンツに対する価値評価も,活用する局面では重要な意味を持つ。多用化するコンテンツビジネスに必要な素養と,学究の場としての大学院について,田中さんに話を聞いた。





異動先は,コンテンツの活用を陰で支える「コンテンツ&ライツセンター」
 1994年に石油会社から現在の民間放送局へ転職して以来、これまで営業局,事業局に在籍していましたが,コンテンツ&ライツセンター(編成局)への異動は私のキャリアにおいて,また放送局のビジネスモデルを見直す上でも,大きな転機となりました。現在の部署はコンテンツの2次利用の際に必要な,著作権法上の複雑な権利処理,関係者との調整,訴訟対応などの実務を行なっている部署です。
 放送事業者は,総務省の許認可の下,「電気通信事業法」,「放送法」,「電波法」により事業活動が行なわれていますが,実務において特に関係深い法律が,著作権法です。ちなみに著作権は,大きく「著作権」,「著作人格権」,「著作隣接権」に分けられています。「著作隣接権」は,「著作物を公衆に伝達できる権利」であり,放送事業者には同権利者として「複製権」,「再放送権,有線放送権」,「送信可能化権」,「テレビジョン放送伝達権」が与えられています。テレビドラマを制作する場合は,原作者,脚本家,楽曲提供者,出演者など,制作に関わる多くの権利者との調整を図らなければ,実現しません。

 コンテンツ&ライツセンターが放送局で果たす役割の重要性については,これまでの仕事の中でも十分認識していました。例えば,営業局時代,担当するアニメーション番組に関連して,スポンサー企業がキャラクター商品を販売する際には,マーチャンダイジング,ライセンス契約の締結などが必要でした。また,事業局で番組関連グッズを企画・販売する際には,タレント所属事務所との間でロイヤリティを含めた許諾契約を交わさなくてはなりません。特に,知的財産権の重要性が認識されるようになったここ数年,タレント所属事務所をはじめ,取引先のリーガルマインドも確実に高まっています。
 人事異動が決まり,経験豊富なスタッフと肩を並べて活躍できるようになるためには,少しでも早く専門的な法律知識と実践的な知識を身に付ける必要性がありました。こうした背景もあり,働きながら大学院へ通う目的意識はハッキリしていました。

テクノロジー,ビジネスのセンスも必要な時代に
田中康之さん 一般的に民間放送局の収益の多くは,CMによる広告収入が占めていますが,IT化とデジタル化の波,それに伴うコンテンツ活用媒体の“ウインドウ”の多様化を背景に,今後は放送外収入の映画,ビデオ,DVD,イベントといった,映像・文化事業の強化も期待されています。つまり,現在の放送局での法務,著作権処理実務を考えると,少なくともテクノロジーの進化とそこから派生する新たなビジネスモデルの可能性,そのほか実社会,消費者とのバランスを無視することができない時代になったと言えるでしょう。実際に,インターネットに代表される通信技術の発展は,コンテンツの流通拡大をもたらす一方,一部で著作権侵害の横行を許してしまいました。
 また, BS放送,CS放送,地上波デジタル,CATV,インターネット(ブロードバンド),モバイル(ワンセグ),IPマルチキャストといった,媒体別のビジネスを展開していくためには,放送局1社のリソースでは到底対応できません。実際には,商社や広告代理店,通信会社のほか,コンテンツ事業各社との資金面,人材面での連携,ノウハウの結集が必要になります。
 このように,コンテンツビジネスに携わる人材の裾野は拡大し,ビジネス法務が必要となっているのです。

「デジタルコンテンツマネジメント特論」は,1つのチャレンジ
 金沢工業大学大学院 知的創造システム専攻は,法律とテクノロジー,ビジネスの各分野の実務知識を体系的に学ぶことができる,数少ない大学院です。 テクノロジー面ではITに特化した,1年制の工学修士課程となっています。今まさに,通信との連携が進む放送業界側のスタッフとしては,特に関心の高い技術領域です。過去にインターネットショッピングをプロデュースした経験はありましたが,関連する技術,法律の仕組みまで理解することで,インターネットビジネスの本質を見ることができました。この異なる本質とは、IT産業に例えると、システムを運用するYahooとシステムを開発・運営するGoogleの企業体質の決定的な違いでもあります。
 修士研究では,プログラミング経験のある共同研究のパートナーのほか,「サイバーロー特論(現:インターネット法務特論)」の荒井俊行客員教授,「XML特論」の大野邦夫客員教授などのご協力を得て「モバイル・エージェント機能を用いたコンテンツ配信監査システム」をテーマした論文を提出することができました。

 今年から,金沢工業大学大学院には選択科目に「デジタルコンテンツマネジメント特論」(杉光一成教授土井宏文客員教授)が新設されましたが、ここでは複雑化する現在のコンテンツビジネスのマネジメント手法について,権利保護,活用はもちろん,資金調達にいたるまで学ぶことができます。特に,全15回のうち多くのの講義では,テレビ,映画,音楽,ゲーム,出版,キャラクターといったコンテンツ業界の知財・法務プロフェショナル,プロデューサーなどをゲストスピーカーとして招き,各分野で異なる制作,権利保護,活用,資金調達,ビジネスモデルなど,コンテンツビジネス全般を学ぶことができます。
 現在の時代背景,市場ニーズをスピーディーに取り入れ,業界をリードする実務家による実践的な講義内容を実現できる点こそ,実学を求める社会人大学院ならではのチャレンジだと思います。今後,こうした実践的な内容を,いかにアカデミックな講義へと体系化していけるか,修了生として,そしてコンテンツを扱う関係者として期待したいところです。

田中康之さん
都留正明氏
「デジタルコンテンツマネジメント特論」では,田中さんもゲストスピーカーとして参加。他大学もゲスト講師を務めることも ドラマ「タイヨウのうた」のプロデューサー,TBSテレビ・都留正明氏も教壇に。
ドラマ制作の現場について解説。
 


優秀な若い院生とのコミュニケーションは,日頃のマネジメント業務にも役立つ
 社会人大学院には研究活動以外の面でも,院生や教授陣との「異業種・異世代コミュニケーション」を通じて学べる点が多くあります。これまで,自分や会社,業界の中で凝り固まっていた価値観を客観的に社会と照らし合わせてみた時,新たな自分の価値観,目標を見出すことができます。
 例えば,老若男女が共に同じ院生として,同じテーマ,多様な目線で議論できたことは,とても貴重な財産となっており,日頃のマネジメント業務にも生かされています。企業では昔のような年功序列は崩れつつあり,若い部下の方が年配の管理職以上に,専門知識やスキルを持っているケースも増えています。つまり,優秀な部下の能力をいかに評価し,十分に引き出して活用していくこかが,現在のマネジメント層にとっての重要な課題と言えます。その点,キャンパス内外での議論では,できるだけ若い院生の意見に耳を傾けるよう心がけました。

現在は,「放送コンテンツの資産評価」について研究
将来は,「コンテンツプロデューサー」の育成を

 修了後の現在は,青山学院大学法学研究科附置ビジネスロー・センターの特別研究員として,「放送コンテンツの資産評価」をテーマにした研究を続けています。同大学院の菊池純一教授は,「知財アウトカム(成果)ロジック」を提唱する,知的財産,先端技術の経済的価値評価の第一人者であり,金沢工業大学大学院でも客員教授として「知的財産評価特論」を担当されています。
 放送局には,過去に放送した番組や取材した映像など,豊富な「金の卵が」あると言われています。今後,こうしたコンテンツを戦略的に活用していくためには,まず,知的財産としてのコンテンツを定量的に分析すること,そのための評価指標について議論することが重要です。未着手のテーマについて,現実と擦りあわせながら研究していくことは,とてもやり甲斐があります。将来は,博士論文のテーマとして発展させてゆきたいと考えています。
 今後も,放送業界の中でコンテンツマネジメントに携わり,将来のコンテンツプロデューサーの育成に寄与できればと思います。



[知財を学ぶ]トップへ

TechnoAssociats, Inc. 記事に関するお問合せは info@chizainavi.jp
Copyright (c)2004-2012 TechnoAssociates,Inc. All Rights Reserved.